地域に一歩踏み込むことで初めて感じる、土地の味のようなものがある。その土地の土を踏み締めて、空気を吸って、小道を歩き、地元の人と言葉を交わす。生活の匂いをかいだり、生業の痕跡を見つける。同じ土地に2週間も滞在すると、何となく水にも食べ物にも体が慣れて、ほんの少し、顔つきも地元民らしくなってくる(ような気がする。)
自分の足で歩いてみると、言葉にならない色々な感覚で、その土地を少しだけ理解できる。そしてその土地に対して、丁寧に向き合いたくなる。
くらし、食、言葉、命。受け継がれてきた新旧様々なもので形成される土地の情緒。”ふるさと難民”の多い現代で、そうしたものにふれることは、どこか心の大切な部分を和ませ、豊かにしてくれると思えてならない。
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現在の事務所の前には100段の階段があり、修行のように毎日それを上り下りしています。早く上に登ることだけが良いとは限らず、時には子供のように階段の横に生えている草花を眺めたり、振り返って景色を眺めたり、数段後戻りしてみたり、たまには踊ってみたり、地団駄を踏んでみたり、色々なステップを、色々な人と踏めば、色々な100段の時間があり、最後は必ずホッとできる場所に辿り着く。そんなことを階段を上りながら考えています。なので、グッドステップスのロゴには、「100 steps」の文字が隠れています。
地域に関わるお仕事は、誰かが登ってきた階段のストーリーを大切に咀嚼して、次の一段の土台をつくり、続くステップをまた誰かにお渡しするということだと思っています。言葉やデザインがそこに加わることで、少しでもモノゴトつながりが生まれ、積み重なっていくような仕事ができればと願ってやみません。
2007年東京外国語大学中国語学科卒業後、台湾へ単身渡航し現地就職。2010年電通国華股份公司(現DENTSU ONE)入社。A Eとして日系企業や日本観光庁の「Visit Japan Campaign」訪日観光促進キャンペーン広告のなどを担当し台湾から日本各地をロケや取材で回巡る。そんな中、クリエイティブへの転身を志し2013年帰国、桑沢デザイン専門学校夜間部ビジュアルデザイン学科入学。在学中からのアルバイトを経て、佐藤卓デザイン事務所(現TSDO)に就職。Issey Miyakeなどを担当し、広告デザインや店舗立ち上げなどに関わる。2018年フリーランスとして独立。2023年株式会社グッドステップス設立。